東急不動産株式会社
佐藤 文彦 様/佐藤 聖也 様
2026年8月18日
一般社団法人オンラア未来会議
代表理事 柳堀(髙橋)裕太
東庄町は、袋小路から交差点に変わる工事の最中にあります。
面白い町だと思っていただけないでしょうか。まずは、それだけをお伝えできればと思って書きました。
そう考える理由を、以下に挙げます。
千葉県香取郡東庄町(とうのしょうまち)、人口12,182人。東京都心から車で約90分。
なお、再生可能エネルギー・データセンター・物流施設は、いずれも立地する町の人口規模に依存しない事業だと理解しています。人口1.2万・2050年に半減という数字は、これらの事業の可否を左右しません。左右するのは、土地・電力・道路・地盤、そして地元の合意です。本資料はその前提で書いています。
本日はありがとうございました。お話を伺い、御社が見ていらっしゃるのは個別の物件ではなく、その地域がこれから何になるのかだと理解しました。
本資料は町の概況書ではありません。この町で行政の外から実際に事業をしてきた人間の見立て(スコープ)です。ですので、次の二つを先に分けて申し上げます。
もう一点、立ち位置について。私どもはこの構想を、東庄町に対して無償の提言として出しています。提言と実行は切り分け、実行段階の業務は公募を前提としています。私どもが手を挙げる場合も、他の事業者と同じ土俵で競います。まちづくりで最も警戒されるべきは「実績のない民間が公金を取りに来た話」に見えることであり、その答えを設計の側で先に出しておきたいためです。
なお、本資料は東庄町の公式な計画ではありません。 町が決定した方針でも、町を代表した見解でもなく、私個人が、この町で事業をしながら考えてきたことです。
そしてもう一点。本日初めてお会いしたばかりですので、何かをお願いしたくて書いたものではありません。 具体的な話をご相談できる段階だとも思っておりません。まずは、こういう町があるのかと知っていただければ、それで十分です。 そのうえで、もし面白いと思っていただけたら、そこから先はまたご相談させてください。
千葉県の北東端、利根川の南岸に位置する町です。東京から約80km圏、成田から約30km圏。 東は銚子市、南は旭市、西は香取市と接し、北は利根川を隔てて茨城県神栖市と向かい合っています。面積46.25km²。(東庄町公式)
| 市 | 特徴(公表資料・報道による) |
|---|---|
| 銚子市(東に隣接) | 2025年の全国主要港で水揚量1位(22万3,374トン)。3年ぶりの首位奪還。醤油醸造の産地。沖合は洋上風力発電の促進区域(選定事業者は撤退し、千葉県庁内に相談窓口が設置) |
| 旭市(南に隣接) | 令和5年 市町村別農業産出額 全国5位・千葉県内1位(559.4億円)。野菜・畜産が県内1位。九十九里浜に面する |
| 香取市(西に隣接) | 佐原の重要伝統的建造物群保存地区(小江戸)、香取神宮。東関東自動車道 佐原香取IC が置かれ、東庄町から約25分 |
| 神栖市(北・利根川対岸) | 鹿島臨海工業地帯の中核。石油化学・飼料の集積に加え、風力発電が多数立地。波崎工業団地 |
| 鹿嶋市(北東) | 日本製鉄 東日本製鉄所 鹿島地区。鹿島港(掘込式工業港)、鹿島神宮 |
| 成田市(西) | 成田国際空港。日本の国際航空貨物の玄関 |
鹿島臨海工業地帯(鹿嶋市・神栖市)は、約180社・従業員約2万2,000人、製造品出荷額等2兆2,681億円(平成30年確報値)で茨城県全体の約2割を占めます。
私の見立て:東庄町の価値は、町の中だけを見ていても分かりません。日本一の漁港、全国5位の農業、2兆円の重化学工業、そして国際空港 ── これらに四方を囲まれた、ちょうど内側にあるのが東庄町です。
そして東庄町自身は、まだそのどれでもありません。工業都市でも、港町でも、空港の町でもない。囲まれているのに、まだ何にも染まっていない場所です。土地の価格も、周囲の産業都市とは比べものになりません。
私は、そこが一番面白いところだと思っています。
東庄町は長らく袋小路でした。どこかへ行く途中に通り過ぎるだけの町です。通過は一円も生みません。
私の見立ては、一つです。
東庄町はいま、袋小路から交差点に変わる工事の最中にある。
そして、交差点が稼ぐには「留まる理由」が要る。それを仕込めるのは、道路が通る前の今だけです。
交差が収益になるには、順序があります。
通過(流れが交わる)→ 滞留(留まる理由を置く)→ 取引(そこで交換が起きる)
道路の全通は「通過」を作ります。そこに「留まる理由」がなければ、東庄はより速く通過される町になるだけです。 私が最も警戒しているのは、そこです。
東西の軸 ── 国道356号 東庄銚子バイパス(事業中)
東庄町新宿を起点として銚子市小船木町まで延長8.6km。東庄町側4.4kmでバイパスを新設し、銚子市側4.2kmで現道を拡幅します。事業期間2024年度〜2033年度、全体事業費約150億円。
(千葉県県土整備部道路計画課 事前評価資料)
南北の軸① ── 東関東自動車道 水戸線(工事中・まもなく全通)
鉾田IC〜潮来IC 約31kmが工事中で、令和8年度(2026年度)開通見込みです。うち行方IC〜鉾田IC間は前倒しで令和8年度半ばの開通を目指すと公表されています。
(NEXCO東日本/国土交通省 関東地方整備局 常総国道事務所)
南北の軸② ── 東関東自動車道 鹿嶋神栖線〔(仮称)鹿行南部道路〕(構想段階)
もともと東関東自動車道は、法令上「鹿島線」として鹿嶋市を終点とする計画でした。その後、水戸市までの延伸が決まり、鹿嶋方面は積み残されてきた経緯があります。それが、いま動き始めています。
(日本建設新聞社 2024年10月26日付/茨城県 高規格幹線道路網の整備/茨城県広域道路交通計画)
この三本が意味すること
私の見立て:356号バイパスが東西を、水戸線と鹿嶋神栖線が南北を担います。そして鹿嶋神栖線の終点側にある波崎工業団地は、利根川を挟んだ東庄・銚子の対岸です。つまり、東西の幹線と、南北の高速道路網が、利根川をまたいで東庄の正面で合流する構図になります。
鹿嶋神栖線はまだ構想段階であり、確定した話として申し上げるつもりはありません。ただ、東西の356号バイパスは既に事業化して着工しており、水戸線はまもなく全通します。「二本は確定、一本は構想」── それでも、この町の前提が10年で変わることは、ほぼ動かないと見ています。
東洋合成工業株式会社の千葉工場が東庄町にあります。半導体製造に不可欠な感光材(フォトレジスト材料)の主力生産拠点です。
(日本経済新聞、オートメーション新聞ほか各報道)
AIの普及で半導体需要が伸びるほど、この町の工場に資本が入ります。 東庄町は「衰退する農村」という一般的な像とは違い、先端産業のサプライチェーンの一点です。町内には東庄工業団地もあります。
人口は12,182人(令和8年8月1日現在・町公式統計)。今年4月1日の12,266人(同)から4か月で84人減。国立社会保障・人口問題研究所の推計では2050年に6,895人(ほぼ半減)で、生産年齢人口から先に細ります。
私の見立て:多くの地方は「産業がないから人が来ない」という順序ですが、東庄町は逆だと考えています。産業は現にあり、投資も続いている。足りていないのは、そこで働く人の住まいと、その周りの生活です。 人が減っているのに、住むところが足りない ── 一見矛盾したこの状態が、いま現場で起きていることです。
そして、工場や施設が来ても、家族や若い社員が週末に過ごす場所のない町には、人は定着しません。 後述する「最初の一手」は、その受け皿を先に作る話でもあります。
| 指標 | 値 | 意味 |
|---|---|---|
| 実質公債費比率 | 4.8% | 警戒ラインは18%。借金の重さは全く問題ない |
| 将来負担比率 | なし | 優良 |
| 財政力指数 | 0.42 | 自前で稼ぐ力は弱い |
| 経常収支比率 | 86.9 → 92.7(令和5→6年度) | 1年で5.8pt悪化。硬直化が始まった |
| 歳入構造 | 地方交付税 24.3億 > 町税 15.77億 | 国からの交付税が町税を上回る |
| 財政調整基金 | 約13.7億 | 自由に使える貯金。ただし取り崩し局面に入った備え |
(決算カード・財政状況資料集は令和6年度、歳入は令和8年度当初予算書)
借りる余力はあるが、自由に使えるお金が急に減り始めた町です。ここで私は、「健全な今だから大型投資ができる」とは考えていません。逆です。
健全な今だからこそ、小さな検証を、財政を傷めずに回せる。
大きな投資や起債の判断は、需要が数字で見えた後に、その時の財政で改めて行えばよい。いま動く意味は、悪くなってからでは同じ挑戦ができなくなる、その一点にあります。
東庄町は下総台地の東端に位置します。面積46.25km²、東西約9km・南北約10.5kmの台形状。標高の最高地点は小南城山地先で56.5m。北部と南部に傾斜して低地を形成し、最低地点は笹川港付近で1.6mです。低地は水田に、台地の斜面は森林に、上部の平地は畑作に利用されています。(東庄町公式)
町が防災用に公表している海抜を見ると、生活と産業の中核は台地の上にあります。
| 台地部 | 海抜 | 利根川沿いの低地部 | 海抜 | |
|---|---|---|---|---|
| 旧東城小学校 | 54.0m | 下総橘駅 | 9.5m | |
| 東庄中学校 | 53.4m | 笹川駅 | 5.4m | |
| 旧橘小学校 | 52.6m | 東庄町役場 | 4.7m | |
| 旧神代小学校 | 52.5m | 笹川漁港 | 1.3m | |
| 東庄病院 | 44.8m |
(東庄町「町内の標高(海抜)について」)
下総台地は関東ローム層に覆われた洪積台地で、沖積低地に比べて地震の揺れが増幅されにくく、液状化が起こりにくいとされる地形です。
そして東庄町は、太平洋に直接面していません。 隣接する銚子市・旭市は海に面しており、御社が運営される勝浦もそうです。東庄町は利根川の南岸、内陸側にあります。
私の見立て:ここが、東庄のあまり語られてこなかった位置取りです。気候の恩恵は海から受けながら、海に直接向き合ってはいない。 そして標高40〜54mの台地の上に、まとまった土地があります。
ただし断定は避けます。 私は地盤の専門家ではなく、「岩盤」と言い切れる調査結果を持っているわけではありません。また町域には利根川沿いの低地もあり、そちらは条件が異なります。千葉県が「液状化しやすさ・危険度マップ」「揺れやすさマップ」を250mメッシュで、津波浸水予測図も公開しています。御社の技術部門で、候補地のメッシュを直接ご確認ください。私の言葉ではなく、県のデータでご判断いただくのが確実です。
データセンターにせよ物流施設にせよ、地盤と水害のリスクは立地判断のいちばん最初に効きます。 そして東庄町は、この点をこれまで自分から言ってきませんでした。地味すぎて、町の魅力として語られてこなかったのだと思います。
東庄町には気象官署がないため、東に隣接する銚子(気象庁 銚子地方気象台)の値を挙げます。
| 銚子 | 東京 | 差 | |
|---|---|---|---|
| 年平均気温 | 15.8℃ | 15.8℃ | 同じ |
| 7月 日最高気温の平均 | 26.6℃ | 29.9℃ | −3.3℃ |
| 8月 日最高気温の平均 | 28.6℃ | 31.3℃ | −2.7℃ |
| 1月 平均気温 | 6.6℃ | 5.4℃ | +1.2℃ |
| 年較差(最暖月−最寒月の平均気温) | 18.9℃ | 21.5℃ | −2.6℃ |
(気象庁 平年値・統計期間1991〜2020年)
年平均気温は東京とまったく同じ15.8℃です。それなのに、夏は3℃近く涼しく、冬は1℃以上暖かい。 房総半島の沖を黒潮が流れ、三方を水に囲まれた海洋性の気候だからです。
さらに、気象庁の観測記録(統計開始 1887年1月)を見ると、銚子で日最高気温が35℃以上になった日は、139年間で4日しかありません。
年間の猛暑日数は、記録上の最多でも1日です。
ただし正確に申し上げます。 銚子は東庄町の東およそ15kmで、太平洋に直接面した地点です。東庄町は利根川沿いのやや内陸にあるため、海洋の影響は銚子よりいくらか弱まります。町単位の実測値は持ち合わせていません。それでも、この一帯が「夏に極端に暑くならない」ことは、139年の記録が示しています。
私の見立て:これは、東庄で暮らす人が「当たり前」として語ってこなかったことです。ですが外気温は、データセンターの冷却負荷と物流施設の空調負荷に直接効きます。 猛暑日がほぼ発生しないという条件は、外気冷却(フリークーリング)を使える時間が長いことを意味すると理解しています。ここは、御社の技術部門の方が私よりずっと正確に評価されるはずです。
数字や事業の話の前に、私が変えたいことを一言だけ申し上げます。
東庄を、子どもが「ここには何もない、早く出たい」ではなく、「ここで自分は価値を生める」と思って育つ町にする。
人口や財政は、大切ですが結果です。私が病巣だと考えているのは、その奥にある諦めです。目指すのは頭数を増やすことではなく、この町で満ち足りて生きられる人を増やすこと。小さくていい、深ければいい、と考えています。
構想は、三つの環でできています。
これを回す器として(仮称)まちづくり東庄公社を、その中核の受付として次世代型の道の駅(国道356号バイパス沿い・子育て支援センター隣接)を将来像に置いています。
ふるさと納税は、現状は数千万円規模です(令和8年度当初予算の寄附金計上は2,900万円)。近隣には、ふるさと納税で大きく伸ばした自治体もあります。桁の伸びしろがそのまま残っているという読みです。ただし「なぜ東庄で可能か」の実証が先で、額を先に置くと手段が目的化します。
私は、道の駅を建てる順番は後だと考えています。需要が数字で証明される前には建てず、過大な来場目標も置きません。防災機能まで一つの拠点に集約する案は、水害での孤立リスクもあり、第二幕で「分散案」と並べて改めて考えます。
線引きは一文で足ります ── 建てるのは需要を実証した後、語るのは今から。 全国の失敗例が繰り返し教えるのは、「箱を先に建てて、後から客を探す」型は必ず行き詰まる、ということです。
最初の一手は、利根川という、この町にしかない資源からです。利根川の河口は、シーバス釣りの聖地であると同時に、野鳥・絶滅危惧種の聖地でもあります。大きな設備にも特別な許認可にも頼らずに始められるところから着火します。
いまは「野鳥がいる」「畑がある」だけで、見に来た人が自分で見て終わり、町の稼ぎにはなりません。これを、手ぶらで、初心者でも、海外の方でも「最高の一日」を買える体験に変えます。物販より単価が高く、利益率も高く、また来たくなる。これが稼ぐ力の入口であり、働く人が週末を過ごせる町になるための受け皿でもあります。
ただし、野鳥は見せ方を誤ると資源そのものを壊します。繁殖期や営巣地への配慮を「商品の作法」として最初から組み込みます。
今年やることは、事業の生死を決める「三つの当たり」を取ることだけです。環境配慮と観察の作法を専門家に確認しガイド候補を一名見つける/協力してくださる農家を一軒見つける/小さく試せる段取りを一枚にまとめる。一発で大きな計画に賭けることはしません。
| 流れ | 実在するもの |
|---|---|
| 先端産業 | 東洋合成工業 千葉工場(半導体向け感光材) |
| 一次産業 | 畜産(SPF豚)、鴨、うなぎ、いちご等 |
| 現代アート | 国内外で活動する現代美術作家が、2026年4月に約1か月、廃校の図工室で滞在制作。以降も美術関係者の視察が続いています |
| 移住した人材 | 東京藝術大学・多摩美術大学の修了生が移住し、一次産業とのデュアルワークで生活。私どもが関わった移住は40代以下を中心に十数名(自団体調べ) |
| 自然 | 利根川河口の水辺・野鳥・絶滅危惧種 |
| 使える器 | 廃校(RC造・稼働中)、空き家(台帳を作り、一軒ずつ承継に関わっています) |
東庄に足りないのは資源ではありません。交差させる仕掛けと、それを少人数で捌く仕組みだけです。 人口1.2万・職員少数の町でそれを回すには、AIを梃子にするしかないとも考えています。私どもは自社のEC事業で、多言語化と物語の生成、小さな取引を自動で処理する仕組みを実際に稼働させています。
順番を間違えないようにします。当事者に当てて直す → 関門の当たりを取る → 小さく試す、の順です。
まちづくりが炎上する最大の原因は、「計画を固めてから、住民に説明に行く」ことです。私どもは逆にします。若い女性・高齢者・若者・農家・外国籍の住民の方などに、固まる前に、まず聞きに行きます。
構想の中身より先に、構想の持ち方も固めます。公社や第三セクターに町の損失補償・債務保証は付けません(付けた瞬間に町の「隠れた借金」になります)。運営のリスクは運営する民間の側に置き、公金が関わる部分は1〜3年の区切りで測り、降りる基準を先に決めます。
体験を案内するのは地元の担い手です。ガイドを育てることそのものが構想の中心で、私どもの役割は仕組みを設計し伴走することです。付け加えると、体験ガイドの運営能力は、私どもにはありません。 私どもが実証済みなのは、ECの運用、空き家承継の型、そして廃校の運営 ── 場を運営し、能動的に動く力です。
本日、御社がデベロッパーの中でも再生可能エネルギーに力を入れておられること、AIデータセンターや物流施設に強みをお持ちであること、そしてそれらと併せてコミュニティの強化という形で関われるかもしれない、というお話をいただきました。
そこで、いただいた枠組みに沿って、この町に何があるかを並べてみました。 事業のご提案ではありません。私は御社の事業の中身を存じ上げませんので、以下はすべて素人の想像です。見当違いでしたら、笑って読み流してください。
御社の再エネ事業ReENEは、2026年6月末時点で173件・定格容量2,082MW(稼働済139件・開発中34件)と拝見しました。
この規模で地方に入っていかれるとき、私が現場で見ている限り、用地の確保より難しいのは地元の合意です。
東庄町は農地と平地が多く、利根川対岸の神栖市には風力発電が多数立地しています。また隣接する銚子市の沖合には再エネ海域利用法に基づく促進区域があります。ただしこの区域については、選定事業者が撤退し、千葉県庁内に中小企業者等の相談窓口が設置されています(銚子市公表)。今後の再公募等がどうなるかを、私は把握しておりません。
私の見立て:洋上風力は海の上の話ですが、それを支える陸側 ── 作業員の住まい、資材のヤード、維持管理の拠点 ── は必ず陸に要ります。 東庄町には、その陸側に必要なもののうち土地はあり、住まいと生活の受け皿がない。ここでも同じ構図です。
そして最も大事なことを申し上げると、再エネで揉めるのは、地元が「勝手に決められた」と感じたときです。 適地かどうかより、そちらの方がはるかに難しい。
御社が物流施設・データセンター・植物工場の開発を手がけておられることは承知しております。
データセンターの立地要件は、電力・土地・水・冷却・通信、そして地盤でしょうか。東庄町には、半導体材料の主力工場が現に立地し、稼働し、投資が続いています。 産業用の電力とインフラが実際に使われている町だということです。
加えて、第3章で申し上げた二つが効くと考えています。
冷却にかかる負荷と外気冷却を使える時間、そして水害リスクという観点で、意味を持つ数字ではないでしょうか。
系統の空き容量については私は把握しておらず、そこは御社の方が正確でしょう。私が申し上げられるのは、土地と、静けさと、地盤と、涼しさと、行政との距離の近さです。
ただし率直に申し上げます。データセンターは、地域から見ると「広い土地を使うのに、雇用がほとんど生まれない箱」に見えます。 私はここが、この事業の最大の弱点だと考えています。
「LOGI'Q市原」「LOGI'Q蓮田」(大型蓄電池を併設したエネルギーマネジメント)などを拝見しました。
東庄町には東庄工業団地があります。そこへ、第3章で申し上げたとおり、東西には国道356号バイパスが着工済み、南北には東関東道 水戸線がまもなく全通し、その先に鹿嶋神栖線の構想があります。 加えて、成田空港・鹿島港・銚子漁港が周囲にあります。物流の条件という点では、これから10年で悪くなる要素は見当たりません。
これも同じで、物流倉庫は地域から見れば「土地と道路を使うのに、雇用は薄い箱」です。
最初に、私が申し上げるまでもないことを一つ。
御社グループは、東庄町の西隣ですでに30年以上、事業を続けておられます。
小見川東急ゴルフクラブ(千葉県香取市/旧・小見川町)
東急リゾーツ&ステイ株式会社 経営、1992年10月開場。霞ヶ浦や利根川を控えた丘陵コース。都内から電車で約90分。
つまり「この一帯が、都心から人を呼んで過ごしてもらえる場所である」ことは、御社が30年以上前に判断し、実際に続けてこられたことです。 私が新しく申し上げることは、何もありません。
さらに南房総では、「東急リゾートタウン勝浦」(ゴルフ場・プール・テニスコート・リゾートマンション・別荘地を含む面開発)を運営され、その紹介には「冬も温暖で年間を通して穏やかな気候」とあります。会員制リゾートホテル「東急ハーヴェストクラブ」は全国28施設・会員約2万8千人、東急リゾーツ&ステイ全体では年間400万人が利用されていると拝見しました。
「千葉の穏やかな気候はリゾートになる」ことを、御社自身がすでに二度、実証されています。
そのうえで、私の見立てを申し上げます。東庄は勝浦にはなれません。 海は見えず、オーシャンビューの客室は作れない。同じものを作る話ではありません。
東庄が持っているのは、別の組み合わせです。
「海の見えるリゾート」ではなく、「食と自然の、静かな滞在地」です。房総の南(勝浦)とは、別の資源で成立する土俵だと考えています。
もう一点。御社の多拠点居住サービス「あちこちすみか by COMFORIA」(2025年10月プレサービス開始・首都圏と関西の指定物件を活用)を拝見しました。都市の会員が90分で行ける、地方の滞在先という枠は、まだ埋まっていないのではないでしょうか。
ひとつ、素朴な疑問があります。小見川のゴルフ場に来られたお客様は、その前後にどこへ行かれているのでしょうか。 おそらく、どこにも寄らずにお帰りになっているのではないかと想像しています。第2章で申し上げた「通過 → 滞留 → 取引」でいえば、まだ通過の段階です。もし寄る先があるとしたら、すぐ東隣なのですが、といったことを考えていました。
ただし、順番は変えません。第4章で申し上げたとおり、まず小さく検証してからです。 箱を先に建てて後から客を探す型は、必ず行き詰まります。
再エネも、データセンターも、物流倉庫も、地域から見ると共通の顔をしています。「広い土地を使うが、雇用は薄い」 です。だからどの地域でも、最後は同じところでつまずきます。
地元が、納得しているかどうか。
これは、寄付や、年に一度の説明会では解けません。日常的にその町にいて、住民の顔と名前を知っていて、行政と対等に話せる誰かが、間に立っている必要があります。
「自前で地元の協力者を探せばよい」というお考えもあると思います。実際にその通りです。ただ、東庄町で何が起きるかを一つだけ申し上げると、私どもはいま、校庭遊具の安全対応や施設インフラの更新費用の負担について、町と実務と費用の分担を協議しています。 これは廃校を借りて2年目に入ってから、実際に困って、一つずつ詰めている話です。同じことを外から短期間で立ち上げるのは、簡単ではないと思います。
廃校の運営、空き家の承継、移住の受け入れ、そして事業の事務局 ── これらを行政の外から継続的に担っている民間主体を、私は東庄町でほかに知りません。 これは自慢ではなく、この町が小さすぎて、これまで誰も入ってこなかったということでもあります。裏返せば、いま入る側にとっては競合がいないということです。
コミュニティという言葉を、御社が「地域貢献」や「CSR」の意味で使われたのか、それとも事業の前提という意味で使われたのかは、私には分かりません。ただ、私が現場で見ている限りでは、後者の意味で考えたほうが、たぶん物事は進みます。
そういう役回りをする人間が、この町には一応いる ── いまの段階でお伝えできるのは、それくらいです。
ここから先は、まったくの空想としてお読みください。
① 「留まる理由」を、道路が通る前に仕込むこと
道の駅は第二幕ですが、その前に検証すべきことが山ほどあります。箱を建てる前の、いちばん安く、いちばん重要な工程です。もし何かをご一緒することがあるとすれば、こういう段階が一番自然ではないかと想像しています。
② 働く人の住まいと生活基盤
先端産業の投資が続き、これから物流やエネルギーの施設が増えるとすれば、そこで働く人の住まいと生活の受け皿が必ず要ります。いまは整っていません。私どもは地元の不動産・建設のネットワークと接続しており、町内で実際に話を着地させる動き方ができます。
③ 既存ストックを使い直す型づくり
廃校を実際に借りて回している主体は、そう多くありません。制度も前例も整っていない領域です。もし東庄で型ができれば、同じ構造を持つ町は全国にありますので、そちらへも持っていけるのではないかと思っています。
本資料には、立地の可否を判断するような数字が入っていません。私が持っていないためです。ただ、町の産業振興担当や関係機関に聞けば取れるものは、いくつかあります。
いますぐ必要な段階ではないと思いますので、お求めではないうちは動きません。 もしいつか必要になったときに、ひとことお声がけいただければ、取りに行きます。
一般社団法人オンラア未来会議は、東庄町で廃校(旧石出小学校・愛称トゥーノーイシデショウ/RC造)を実際に借りて運営している事業者です。企画書を書く団体ではなく、テナントを入れて賃料を回収し、作家を住まわせ、撮影隊を受け入れ、町と費用負担を交渉している運営主体です。
都市の企業が地方で何かを始めるとき、最も足りないのは「現地で日常的に手を動かし、責任を持つ人間」だと考えています。そこを担えることが、私どもの提供価値です。できないことは、できないと申し上げます。
本日、現地をご覧いただけるとおっしゃっていただきました。ありがとうございます。お越しになる際は、下記をご案内できます。半日あれば回れます。
アクセスは、東京都心より車で約90分、東関東自動車道 佐原香取ICより約25分。JR成田線 下総橘駅より徒歩3〜6分ですので、電車でもお越しいただけます。
そしてお昼は、地元の名品豚「林SPF」のとんかつをご用意したいと思っています。お腹を空かせてお越しください。
長くなってしまいました。最後に一つだけ。
本日お話を伺って、都市の企業が地域で何かをされるとき、最後まで残る困りごとは土地でも制度でもなく、「その町で、誰と話せばいいのか」なのではないかと思いました。私はたまたま、そこにいる人間です。そのつもりで書きました。
いま何かを決めていただく必要は、まったくありません。 東庄という町があって、こんなことを考えている人間がいる ── それだけ頭の片隅に置いていただけたら、この資料は役目を果たしています。
またお目にかかれる日を楽しみにしております。
東庄町
- 統計・オープンデータ(人口・世帯数)
https://www.town.tohnosho.chiba.jp/soshiki/somuka/kikakuzaisei_kakari/gyomu/tonoshomachinogaiyo/tokei_opendata/630.html
- 東庄町の概要(位置・面積・地勢・標高)
https://www.town.tohnosho.chiba.jp/soshiki/somuka/kikakuzaisei_kakari/gyomu/tonoshomachinogaiyo/profile/747.html
- 町内の標高(海抜)について
https://www.town.tohnosho.chiba.jp/soshiki/somuka/shomu_kakari/gyomu/tonoshomachinogaiyo/477.html
- 町財政指標:東庄町 決算カード・財政状況資料集(令和6年度)/令和8年度当初予算書
- 人口の将来推計:国立社会保障・人口問題研究所
交通
- 一般国道356号(東庄銚子バイパス)事前評価資料(千葉県県土整備部道路計画課)
https://www.pref.chiba.lg.jp/kendosei/shingikai/kokkohojo/documents/r05-5-setsumeishiryou01.pdf
- 東関東自動車道(潮来〜鉾田)の開通予定(NEXCO東日本)
https://www.e-nexco.co.jp/activity/agreeable/open_schedule/kanto/kanto05.html
- 東関東自動車道水戸線(国土交通省 関東地方整備局 常総国道事務所)
https://www.ktr.mlit.go.jp/jousou/jousou_index003.html
- 高規格幹線道路網の整備(茨城県)/茨城県広域道路交通計画
https://www.pref.ibaraki.jp/doboku/doken/shomu/kansendo/4kosoku/4kosoku3.html
- 鹿行南部道路 建設促進期成会の要望活動(日本建設新聞社 2024年10月26日付)
https://www.jcpress.co.jp/wp01/?p=35975
産業・周辺自治体
- 東洋合成工業 千葉工場に関する報道
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56036250V20C20A2L71000/
https://www.automation-news.jp/2024/08/84262/
- 2025年 全国主要港の水揚量(銚子港1位・22万3,374トン)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFC268410W5A221C2000000/
- 令和5年 市町村別農業産出額(農林水産省/旭市 全国5位・559.4億円)
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sityoson_sansyutu/index.html
- 鹿島臨海工業地帯の競争力強化に向けた将来ビジョン(茨城県)
https://www.pref.ibaraki.jp/kikaku/jisui/kashima/plan/documents/kashima-vision_zentai.pdf
- 銚子市沖洋上風力発電事業について(千葉県/銚子市)
https://www.pref.chiba.lg.jp/sanshin/ocean-re/01_choshi.html
https://www.city.choshi.chiba.jp/business/index0537.html
防災・地盤・気候
- 千葉県 液状化しやすさ・危険度マップ/揺れやすさマップ
https://www.pref.chiba.lg.jp/bousai/jishin/higaisoutei/h28/ekijhoka_yureyasusa.html
- 千葉県 津波浸水予測図
https://www.pref.chiba.lg.jp/bousaik/tsunamityosa/shinsuiyosoku.html
- 気象庁 平年値(銚子・統計期間1991〜2020年)
https://www.data.jma.go.jp/stats/etrn/view/nml_sfc_ym.php?prec_no=45&block_no=47648
- 気象庁 平年値(東京・統計期間1991〜2020年)
https://www.data.jma.go.jp/stats/etrn/view/nml_sfc_ym.php?prec_no=44&block_no=47662
- 気象庁 観測史上1位の値(銚子・統計開始1887年1月)
https://www.data.jma.go.jp/stats/etrn/view/rank_s.php?prec_no=45&block_no=47648
東急不動産様の公表資料
- 再生可能エネルギー事業 ReENE ポートフォリオ(2026年6月末時点)
https://tokyu-reene.com/portfolio.html
- 物流施設 LOGI'Q/インフラ・インダストリー
https://www.tokyu-land.co.jp/infrastructure/logistics/
- 東急ハーヴェストクラブ(ウェルネス事業)
https://www.tokyu-land.co.jp/wellness/hotel/harvestclub.html
- 小見川東急ゴルフクラブ(千葉県香取市/東急リゾーツ&ステイ株式会社 経営・1992年10月開場)
- 東急リゾートタウン勝浦
https://www.tokyu-resorttown-katsuura.com/
- 多拠点居住サービス「あちこちすみか by COMFORIA」プレサービス開始(2025年)
https://www.tokyu-land.co.jp/news/2025/001551.html
※本資料中、出典を付していない記述(移住者数、視察の状況、空き家台帳、所要時間等)は、当法人の管理記録または概算によるものです。
一般社団法人オンラア未来会議
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